根コンブ水の特徴的なぬめりについて

ヌメリの正体は多糖

昆布の栄養をもっとも簡単かつ有効に活用できるのが「根コンプ水」です。この根コンプ水は自宅でつくることができますが、昆布の葉の下部と茎の上部の間の成分を水でしみ出させた液のことです。

昆布はにもどしても、料理に使っても表面にヌメリが出ますが、この根昆布水のヌメリも、コンプの葉の部分から出るヌメリと同じ成分です。
このヌメリは、おおまかにいうと水に溶けやすい性質をもった2種類の多糖と少量のたんぱく質の混合物です。

多糖とは、ブドウ糖や果糖などの個々の糖が化学的に何百、何千もつながったものの総称です。ほとんどすべての植物の細胞壁の主成分のセルロースや、米やジャガイモのデンプンもこの多糖の一種です。
昆布やワカメなどの海藻のヌメリは、多糖の中でも、全体として酸性の性質をもっていますので、酸性多糖といいます。形や性質が繊維状ですので、食物繊維としての性質ももっています。

これに対して、デンプンやセルロースは中性多糖で、セルロースは繊維ですが、デンプンは繊維状のものではありません。これらの多糖が酸性であるわけは、構造の中に硫酸を結合していたり、カルポキシルのような酸性の原子団をもっているからです。

このことは、多糖がからだのためになる、いろいろな性質をもっているということをあらわしています。私たちのからだの関節につまっている潤滑液も、別の種類の酸性多糖です。酸性多糖にも多くの種類がありますが、根昆布水に含まれているものは、水溶性アルギン酸とフコイダンという硫酸多糖です。

アルギン酸には中性の水には溶け出さなくて、アルカリ性にすると溶け出てくるアルカリ可溶性アルギン酸もあります。これら酸性多糖は、構造が非常に複雑なため、まだ解明されていない点も数多くあります。その性質の中で人体に有効な性質をあげますと、

  • ヒトの消化液では消化されにくい。網の目が縦横にからまったような立体構造をしながら胃や小腸を通るので、種々の物質をとり込んで排泄する。
  • 酸性で種々のミネラルと結合しやすい。消化管内で各種のミネラルと結合しやすいので、食品とともに比較的多く摂取されるナトリウムとは結合しやすく、したがって、多量に存荏するナトリウムは結合されて排出される。

などがあります。
また、こうしたヌメリは、海≠操が海中で生きあわているときにもその表面を被っており、海水中の細菌などの侵入を防ぐ働きをしているとされています。

根昆布はヌメリがたっぷり

健康食品として有名になった根昆布ついてです。根昆布の葉の部分は、成長が早く、細胞の分裂力も旺盛で老化しにくいところです。
成分を比較しても、ヌメリやヨウ素などは葉や茎の部分より量が多く、またある種の酵素なども活性が高いことがわかっています。また、根昆布の部分は市販されているいろいろな昆布製品の中でも成分含有量がだいたい一定していますので、葉のほかの部分より、製品による優劣がないようです。その意味で健康食品として昆布を見た場合には、どちらかといえば、品質上当たりはずれがない製品ともいえるでしょう。そうしたわけですので、上質の昆布ならば、葉の部分でも、根コンプと同等の効果が期待できます。

わかめのヌメリは昆布のヌメリと一緒?

化学的に基本分析をしますと、昆布もワカメも成分の種類ははとんど同じですが、細かい点で多少違ってきます。それでは肝心のヌメリに関してはどうでしょうか。ワカメのヌメリも本質的にはコンプと同様で、水溶性のアルギン酸とフコイダンと少量のタンパク質の混合物と考えられます。もちろん、細かい化学的な性質は違いますが、健康に対する有効性の点では同等です。

しかし、昆布とワカメの市販の製品の多くは製造法や保存方法が違うことが問題です。昆布は、根コンプも含めて単なる素干し品が大部分ですが、ワカメの場合には、大部分の製品が湯通し塩蔵ワカメです。
つまり、とってきた生ワカメの藻体から胞子めかぶ葉(芽株ともいい、葉のつけ根から根までの茎のわきに胞子を作る葉がついている部分) を切りとった葉部を85~100度の熱湯で1分程度湯通ししてから20~40%の塩に漬けます。そして、茎をとり除き、さらに塩といっしょに重しをのせて脱水してから適量の塩をまぶして、市場に出しているのがこの塩蔵製品です。

したがって、水溶性のアルギン酸やフコイダンがかなり流れ出してしまい、残りは、ヌメリの残った部分とアルカリ可溶性のアルギン酸ということになります。

もっとも、昆布もワカメも、ヌメリ中に出てくる水溶性のアルギン酸は全アルギン酸の4分の1から5分の1ですから、食物繊維としてのアルギン酸はワカメの塩蔵品にも十分残っているのです。ただし、ヌメリを集めるには不適当だといえましょう。しかし素干しワカメの場合には、いくぷん量は少ないのですが根コンプと同じようにヌメリをとることができます。

ビタミン効果

昆布にはあまり印象がありませんが、じつはビタミン類にも比較的富んでいます。100グラムの無水のコンプ(乾燥させたもの) には、以下のような量のビタミンが含まれています。

  • ビタミンA(1.0mg/560IU)
  • ビタミンB1(0.4mg)
  • ビタミンB2(0.37mg)
  • ビタミンB12(0.03mg)
  • ビタミンC(25mg)
  • ナイアシン(1.4mg)

ビタミンA は肌を美しくたもつとともに、皮膚や粘膜を強くし、風邪に対する抵抗力をつけます。そのうえ、夜盲症にも効果をもつビタミンとして古くから知られています。現代人は特にこのビタミンAが不足しています。

ビタミンB1は、失われた体力を回復し、脚気症状を改善します。またビタミンB2は肝臓の解毒作用を強め、二日酔いにも効果を発揮します。ナイアシンもビタミンB群のひとつです。いずれも呼吸(エネルギー発現の元) に関連した酵素の一部となっています。
B12は、その分子中にコバルトをもち、神経を強くするビタミンです。動物の臓器にあり、動物ビタミンといわれているくらいですが、植物では主に海藻に含まれているビタミンです。
海藻ではノリが圧倒的に多く含んでいます。おなじみのビタミンCは、ビタミンA 同様、肌を美しく保ち、シミなどの色素沈着を防ぐとされ、最近では積極的に摂ると風邪予防になったりガンの予防にもなると言われています。しかし、緑黄色野菜に比べると昆布のビタミンc含有量は少量です。

脂質

昆布の成分として次にとりあげたいのは脂質です。脂質というのは、ふつうの脂肪分を含めた広い意味での油やエーテルなどに溶ける成分をいいます。昆布の脂質の量は、水分をとった藻体の場合でも2.5パーセント程度で、比較的少量ですが、その中身は私たちのからだによい脂肪酸が多いのです。たとえば、養殖コンプ中の2.5パーセントの脂質には総脂肪酸が2.28ーセントあり、そのうち血小板凝集を防ぎ、血栓の形成防止に役立つ、EPA(イワシやサンマの油の中に多い) が220ミリグラム、不可欠脂肪酸(ビタミンFともいわれる)が339ミリグラム、そのほか、類似の性質の脂肪酸が202ミリグラムなどで、脂肪酸全体の35パーセント近くもあります。こうしてみますと、この昆布の脂質は、栄養的には見逃せない成分といえるでしょう。

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