自家製昆布の煮しめ

今から、20~30年前の統計では、わが国はタイ、エルサルバドル、セイロンについで世界で最も乳ガンによる死亡率の低い国でした。

当時の日本人の脂肪の平均摂取量は1日に42グラムでアメリカ人の3分の1以下(アメリカ人は1日に155グラム)でした。

その後、わが国でも乳ガンが増加をはじめ、その増加傾向は脂肪の摂取量の増加に比例していたことが知られています。
つまり、この20~30年間で脂肪を多くとる食事に変わって、乳ガンが増えてきのです。

世界で最も多く脂肪をとっている国はどこかというと、デンマーク、ニュージーランド、オランダで、その3カ国の乳ガンによる死亡率は世界のトップに立っています。
それにつづいてイギリス、カナダ、スイス、アイ〜ランド、アメリカ、ベルギーも、トップ・グループに入っています。

わが国もこの20~30年で急激に食事の内容が変わって、脂肪の摂取量は上位国に近づいているのですが、それでもまだ乳ガンによる死亡率は極端に低いグループに入ります。
研究者のあいだで、それはなぜなのかという疑問が当然もたれました。現在でもなお、わが国の乳ガンによる死亡率はアメリカの6分の1です。

それにまた、乳ガンにかかった日本の女性は、アメリカやイギリスの女性にくらべて長生きです。日本人の食生活に固有のなにかが、そういう効果をもたらしているのことは明らかです。

そこで研究者たちは、日本人がふんだんに食べていて、アメリカ人はまったく食べていない食品を探すことになります。そして行き当たったのが海藻です。
のり以来、昆布、わかめ、海苔、ひじきなどの研究が日本以外でもすすめられているのですが、わかってきた効果は次のとおりです。

  • 殺菌
  • 制癌
  • 免疫システムの支援
  • 血中コレステロールを下げる
  • 血圧を下げる
  • 脳卒中の予防
  • 血液の粘度を下げる

苦からわが国では、長寿村といわれるところでは、とくに海藻が常食されてきたが、海藻のもつこういう効果が健康を高めていたと思われるのです。

現在、昆布を最も多く消費しているのは沖縄県で、近年の統計では健康日太一の県は沖縄です。

研究の結果を総合すると、どうも海藻には脂肪のとりすぎの害を軽減してくれる働きがあるようだとしてハーバード大学のティース博士はこういっています。

「昆布には乳ガンを抑える多くの成分がふくまれていると思われますが、なかで最も期待されるのはフーコイジンという物質です」

わが国の料理は魚介菜藻からダシをとって、それで煮たものが多いのですが、基本となるのは昆布とかつお節です。昆布とかつお節でとったダシのことを基本のダシといっているけれども、これにはほとんど味がないようでいて、なんともいえない深い味があります。

フーコイジンをはじめ多くのしょうゆ成分が溶けこんでいるからです。このダシで煮ると塩(醤油)の量が少なくてすみます。

そしてまさに日本の味になります。ダシをとった昆布は冷凍しておき、少したまったところで酢と醤油で煮るのがおすすめです。角に切って小網に入れ、酢と醤油と水を注ぎ、落としぶたをして極弱火にかけておきます。汁がなくなったら水を足し、昧をみながら少しずつ酢と醤油を加えるようにして、昆布がやわらかなるまで煮たら出来上がりです。

佃煮や塩昆布と違ってわずかな塩味でまとまるため塩のとりすぎにもならず、このひとくちがあると毎日の食事の内容がぐんとよくなるでしょう。

おいしいノリは栄養価も高い

ノリは、お寿司やおむすびなどには欠かせないそして、日本人の食生活にも同様に欠かせない食卓の名わき役です。また、お中元やお歳暮の時期に贈答品として利用されることが多いのも、日本人のノリ好きをよくあらわしています。

有用海操の養殖は、最近ではたいへんさかんになり、寒天、カラギーナンなどの原藻をはじめとして、食用のコンプやワカメの養殖も増えてきましたが、なんといってもノリの養殖は歴史が古く、江戸時代に始まっており、以降、日本はノリの養殖では世界一となっています。

現荏では、毎年100億枚前後のノリが製造され、重量でいうと約3万トンになります。そのうち外国に輸出される量は、非常に少なく3~4%に過ぎません。残りのは国内で消費されているのです。

ノリは一般に12月から翌年2月にかけて収穫されます。そして、それをすぐに水洗いして汚れをとり除いた後、ペースト状にし、機械で四角にすいてから40度の温風で乾燥させて作ります。これがふつうの「干しノリ」で、さらに、赤外線で焦がさないように短時間焼いたものを「焼きノリ」、砂糖や醤油などの調味料で昧をつけて乾かしたものを「昧つけノリ」と呼んでいます。

日本人にノリが好まれているのは、何といっても、こうした製品の昧のよさによるところが大きいでしょう。しかし、最近はそれだけではありません。ノリはビタミンA 、ビタミンB12やほかのB 群および、Cなどのビタミン類やリン、マグネシウム、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、コバルト、セレンといったミネラル類、さらにはEPA、タンパク質、タウリンをはじめとする遊離アミノ酸、またポルフィランという硫酸多糖の食物繊維や食物繊維になりそうな特殊なヘミセルロースなど、人間のからだに必要な栄養素を多く含んでいますので、健康食品として注目に値します。

これらの成分のうちでも、コンプより多いものはビタミンB群とタウリン、EPAなどでしょう。

成人病に欠かせない

ノリに含まれている有効成分のうち、コンプやワカメにほとんどないものはタウリンです。これは約1~1.2ーセントもあります。タウリンは、肝臓の働きを助け、とくに血中のコレステロール値を調節し、また脂質の吸収を円滑にする働きがあります。

貝類の中で、とくにカキやシジミに多いことはよく知られています。さらに、ほかの有効成分はEPAです。EPAは前にも述べましたように、血液を固まりにくくして、動脈硬化や心臓病、脳卒中などの予防効果もあります。
1枚のノリ(3グラム) には30~40ミリグラムものEPAが入っています。

EPA は不飽和脂肪酸の一種で、体内に入るとプロスタグランディンという物質になりますが、このうちの多くのものは、とくに血液中の血小板が集まるのを防ぐ働きをもつプロスタグランニンにかわります。血小板は血液が固まるのを助けるという作用をしますので、もし動脈硬化を起こしているところへ、この血小板が集まってしまうと、固まりがより大きくなり、動脈が完全にふさがれてしまうことにもなりかねません。

ですから、EPAからできるプロスタブランディンの多くは血液が固まるのを未然に抑えて、ひいては心臓病や脳卒中を防いでくれるというわけなのです。また、EPAそのものには、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きもあります。

ノリはビタミン・ミネラルの宝庫

ノリの栄養素の特徴として、ビタミンの含有量が多く、しかもミネラルがバランスよく含まれていることも見逃せません。たとえば、ビタミンについて見てみますと、βカロテンはウナギのかばやきのビタミンA の3倍、ホウレンソウとほぼ同量、B12 はノリ3枚食べれば、1日の必要量(4マイクログラム) にほぼ足りる量( 約3マイクログラム) が含まれています。

さらにビタミンC は海藻としてはずば抜けて多く、レモンが10グラム中90ミリグラム、トマトが20ミリグラムなのに対して、乾燥ノリは100グラム中、100ミリグラム(生ノリにすると約10ミリグラム)も含んでいます。

また、ノリのミネラル類はコンプなどに比較すると少ないのですが、100グラム中、カリウムが2350ミリグラム、鉄が13.4ミリグラム、カルシウムが440ミリグラム、リンが650ミリグラムと実に豊富に含まれています。

しかも、反面、問題を起こしがちな、塩分のとり過ぎに関係するナトリウムは、その量が著しく少なく120ミリグラムしかありませんので、バランスのよい含有量となっています。

ちなみに、この量はコンプに含まれているナトリウムの約28分の1、ワカメの実に50分の1しかないのです。そのうえノリは調理の必要がなく、そのままで食べられるという手軽な食品です。したがって、1日に2~3枚食べれば食物繊維の補給や栄養的にも十分な効果が得られます。

食物繊維が多いワカメ

ワカメは、ごくかぎられた地域にしか見られないコンプとは異なって、室蘭、礼文島以北と紀伊半島以南を除く日本沿岸に広く分布しています。

しかし、近年、天然ワカメは年々収穫高が減る傾向にあり、かわって養殖ワカメが圧倒的に多くなってきています。たとえば、1983年の年間生産量を見ると、天然ワカメの1万トンに対して養殖ワカメは11万3000トンに達しています。また、中国や韓国からの輸入量の増加も目立ってきています。

ワカメはその加工方法によりさまざまな製品に分類できます。代表的なものは採集したワカメを広げて天日で干した「素干しワカメ」、採集後、付着している水をふきとって、灰をまぶしてから天日で干した「灰干しワカメ」、熱湯に浸して茶褐色の藻体を緑色にかえてから冷水につけ、さらに陰干しにした「湯抜きワカメ」、採集後、塩をまぶして脱水し、余分な塩をふるい落としてから冷凍保存する「塩蔵ワカメ」などがよく知られています。

ワカメはコンプと違い、素干しのものは微生物に侵されやすいので、あまり多くは作りません。主に湯抜き(湯通し)塩蔵品です。

いずれの製品にしても、ワカメにはコンプ同様たくさんの有効成分が含まれています。そのうち、まず第一にあげなくてはならないのは、アルギン酸、フコイダンなどの食物繊維でしょう。

干ワカメ100グラム中には、44%以上の食物繊維が含まれています。なかでも、ワカメが成長すると、茎にあたるはうしよう部分の周囲に胞子葉と呼ばれるひだのような葉状器官ができ、これは一般に芽株とかミミと呼ばれているワカメの生殖器官ですが、ここにはとくに脂肪が多量(88%)に含まれています。

これは遊走子がたくさん入っているためです。また、フコイダンも葉の部分より多いのです。私たちのからだに有益に作用するフコイダンの働きについては、すでにくわしく述べましたので、ここではふれませんが、フコイダンを多く含んでいるということで、さまぎまな点で有益な食品であるということは今さら説明するまでもないでしょう。

ワカメの脂質の中味は、コンプと同様に肝臓の代謝機能をよくする不可欠脂肪酸や、動脈硬化を予防するEPAも多く含まれており、その量は100グラムの芽株中に、1.1グラムも含まれています。この点ではコンプの約3倍量にもなります。これまで、私たちがワカメを食べるとき、食用にするのはもっばら葉のやわらかい部分で、葉の下にあってかたい芽株は捨てられていたのですが、それは実にもったいない話なのです。

ワカメはたばこの害も防ぐ

もうひとつ、忘れてはならないのは、ワカメはタバコの害、すなわち、ニコチンの害を防いでくれる働きをもっているということです。ニコチンの害についてはいろいろとありますが、なかでも大きなものは肝臓の働きを低下させてしまう点です。
肝臓は、体内に入ってきた物質を必要なものと不必要なものに分け、必要でもすぐに使わないものを貯えておき、さらに不必要なものは体外に排出しやすい形にかえるという働きをしています。

このとき、肝臓はアミノトランスフェラーゼ、コリンエステラーゼなどの酵素を分泌し、そうした働きがスムーズに行えるようにしているのですが、ニコチンはこれらの酵素の働きを抑えてしまうのです。

これについては、次のような実験がされています。東京農業大学の故・渡辺義雄教授らはネズミをふつうのエサで飼育したグループ、エサにニコチンを混ぜたグループ、エサにニコチンとワカメを混ぜたグループの3つに分け、約4ヶ月飼育した後、それぞれの肝臓の働きを比較検討してみました。すると、ふつうのエサのグループ、ニコチンとワカメを混ぜたエサのグループの肝臓にはばとんど差がなく、エサにニコチンだけを混ぜたグループの肝臓の働きはかなり悪化していました。この結果からニコチンによって抑えられた酵素の働きがワカメのある成分によってほぼ正常にまで回復したものと考えられます。

このニコチンの害を防ぐワカメの物質の本体は、この研究で明らかになっていませんが、ワカメに含まれる有効成分は、量の差はあってもコンプにもだいたい含まれているものが多いので、ワカメのかわりにコンプを使って実験してみれば、おそらく同じような結果がでるのではないかと考えられます。

最近、健康を気にする人の間ではタバコばなれがどんどん進み、嫌煙権運動もますますさかんになっています。タバコはやめられればそれにこしたことはないのはもちろんですが、どうしてもやめられないという人が少なくないのもまた事実です。ですから、タバコを吸う人は、毎朝ワカメの味噌汁飲み、せめてニコチンの害を防ぐようにすることが大切でしょう。

わかめが苦手だという人はこちら。わかめに負けないぐらいのたっぷりの食物繊維が摂れます。

コンブ、ワカメ、ノリの食物繊維比較

四方を海に囲まれた島国であるわが国では、苦から海藻をよく食べてきました。コンプのみならず、ワカメ、ノリ、ヒジキなどその種類も多く、日本人は世界でもとくにたくさん海藻を食べている民族といえます。

コンプについては、これまでにいろいろと述べてきましたので、ここではワカメとノリについて簡単に説明し、コンプと比較してみましょう。ワカメやコンプのヌメリの主成分は、すなわち食物繊維とみなすことができます。

そしてヌメリはこれらの海藻の加工の程度でかわってきます。ただ共通していえることは、アルギン酸には水に溶けるものとアルカリでしか溶けないものがありますが、それぞれの母体になる海藻の種類によって、アルギン酸の性質が違っていますので、共通の性質もありますが、異なる点もあるということです。

フコイダンも同じく、母体になる海藻が違えば性質も違いますが、同一の海藻、たとえばコンブとかワカメにおいても、それぞれ異なった性質の何種頬かのフコイダンを含んでいます。ですから、抗ガン性などでは、それぞれがいちじるしく違うところもあるのです。

要するに、これらの食物繊維の化学的性質は、ブドウ糖とか、ショ糖のような単純な物質ではありませんので、本当のことをいうと、ワカメのアルギン酸やフコイダンは、コンプのものと大まかな性質は同じでも、細部の構造は違うということなのです。

そして、私たちのからだに対する作用にもそれほどかわりないものと、非常に違うものがあります。ノリにはポルフィランと呼ばれる一種の硫酸多糖の食物繊維があり、アルギン酸と同じような生理作用を示しますが化学的にはまったく別種のもので、ちょうど寒天に10%前後の硫酸がついている構造をしており、その硫酸をアルカリで除くと、寒天とほぼ同じものになり、これをノリ寒天と呼んでいます。
中国では、オゴノリ寒天などとともに市販されていますが、寒天と同じく優れた食物繊維です。

コンブの食物繊維の抗しゅよう性

コンブに抗がん性があるか

ここ十数年の医学の進歩は、胃ガンを初めとするガンの予防や治療を可能とし、以前にくらべると、ガンによる死亡率もずいぶん減ってきています。しかし、それでもなお、わが国の死亡原因では、あいかわらずガンが上位を占めており、恐ろしい病気のひとつであることにはかわりがありません。

現在、世界各国でもガンに対する研究がさかんに行われていて、なかでも、発ガン物質の研究とともに、ガンの発生を抑制する効果のある食べ物に関する研究が進められています。

つまり、発ガン物質を食べないようにすると同時に、毎日ガンの発生を抑制する可能性をもっ食べ物を食べ、ガンを未然に防ごうというのです。そして、実はこうしたガンの発生を抑える効果が期待されている食べ物として今注目を集めているのが、動物実験では抗しゅよう性が高いコンプとかワカメやノリなどの海藻です。

いっぽう、アメリカのゲルソン氏などを筆頭にした学者たちが、ヒトのガンでも、食事を選ぶことによって治ると主張しています。つまり、大量の野菜、そのジュース、精白しない穀物、無塩食物、亜麻仁油、カリウム甲状腺剤やすい臓酵素剤などを適当に摂取する方法をあげています。先日は、大手の新聞にエゴマ油がいいという記事が掲載されました。

抗がん性の実験

これまでの注射での実験とは違い、海藻の粉末や、それから抽出したものをガンを植えつけた細物に食べさせるだけでそのガン細胞の増殖が抑えられるという、画期的な実験結果を得ることができました。

その実験は、まず、ジメチルヒドラジンという、腸に特異的にガンを発生させる発ガン物質を、ラット(ネズミの一種)に与え、ふつうのエサだけで飼育したラットの発ガン率と、コンブをはじめとする食用海藻数種類の粉末や抽出物を混ぜたエサで飼育したラットの発ガン率とを比較してみたのです。

その結果、海藻の種類にもよるのですが、海藻を混ぜたエサのほうが、30~70%もガンの発生率が低くなったのです。また、ジメチルベンズアストランセンという乳ガンを特異的に起こさせる物質をラットに与えて、同様に実験をしたところ、これも同じような結果が得られたのです。

これは海藻中に含まれている特殊な成分によるものなのか、それとも腸内で、エサと混ぜた発ガン物質が、いっしょに混ぜてある海藻粉末や、それから抽出した物質のために無効にされたためなのか、というような考え方がありますが、最近の実験によりますと、海藻粉末が発ガン物質が体内に吸収されるのをわずかながら妨げているらしいとのことです。しかし、そのためだけで発ガン率が減ったとは思えないくらいの結果でした。

そこで、別の実験方法を考え、実験結果を再吟味してみました。つまり、発ガン物質と海藻粉末や抽出物をいっしょに食べさせることで、その発生率が抑ひふえられるなら、あらかじめ皮膚などに植えつけたガンも、その増殖が抑えられるのではないかということです。

実験は、60余種の海藻の粉末を用意して、同時にエールリッヒ固型ガンというガン腫の細胞を一定量注入移殖したマウス(ハツカネズミ)を2つのグループに分け、一方にはふつうのエサだけを与え、一方にはふつうのエサに、適量の海藻粉末を混ぜたエサを与えて、どちらも4週間飼育してから、すべてのマウスを解剖して、ガン細胞のかたまりをとり出し、重量を測ってその増殖度を、ふつうのエサブループと海藻粉末を混ぜたエサグループとで比較してみました。

ところが、非常におもしろいことに、35%以上のガン増殖の阻止率を示した海藻が23種類もありました。次に、60余種の海藻のうちから25種類を選び、今度は皮膚に、メスA繊維肉腫というガン細胞を移殖したマウス群の、半分には適量の海藻粉末を腹部に注入し、もう半分はそのままの状態で7日間飼育したのち、前の実験同様に、すべてのマウスを解剖して、ガン細胞の増殖度を比較してみました。

コンプや青ノリについては、高い阻止率を示す種類に入っていましたが、ワカメやノリは低いほうでした。ここでおことわりしておきたいのは、実験の結果待られた阻止率の数字の大小だけで、抗ガン性の効果の有無とか、強弱を議論することはできませんし、また、それだけ早急に結論を出してはならないということです。

その訳は、抗ガン性の実験方法とか、使用したガン細胞の種類などにより、ガン細胞の増殖阻止効果がいちじるしく違ってくるからです。ある方法で、ある種のガン細胞が、ある海藻によりその増殖が抑えられたとしても、ほかの5実験方法とか、ほかの種類のガン細胞で実験したときに、それと同じ結果が得られるとは限りませんし、むしろかなり違うことのほうがふつうなのです。

効果を示す成分

さて、前の実験の結果から、少なくともコンプやワカメ、ノリの粉末には抗ガン性があると思われますが、それでは、その中のどの成分が有効に働いているのでしょうか。

これらの海藻のある種のものには、共通にアルギン酸とかフコイダンがあり、また、それがない種類でも、抗ガン性を示す海藻、たとえばノリにはアルギン酸やフコイダンのかわりに、ポルフィランという硫酸多糖があり、それはアルギン酸などと同類の生理作用をもっていることに注目しました。

そして、前の海藻からも数種類の硫酸多糖を抽出しました。これらは、つまりコンプやワカメ、ノリなどの食物繊維のことです。その硫酸多糖を用いて、前記とまったく同じスケジュールで抗ガン性を調べたところ、アオノリの「ヌメリ」の硫酸多糖、市販のアルギン酸、ワカメのフコイダン、キリンサイやツノマタからとった硫酸多糖の2、3種頬のカラーギナン、ノリからとった硫酸多糖のポルフィランなどは、すべてガン細胞の増殖を阻止しました。

このことから、ガン細胞を移殖したマウスに食べさせて抗ガンを示した海藻粉末の、抗ガン性本体の成分は、少なくともアルギン酸、フコイダン、ポルフィランなどの「海藻のヌメリ成分」であると考えられるのです。ところが、この研究を続けるうちに、今まで知られていなかった新しいことがわかりました。

元来、コンプ、ワカメ、ノリなどの食用海藻のの脂質は単純なものではなく、さまざまな違った脂質の混合物ですので、それぞれからとり出した脂質を各種の成分に分けて、その各成分を使って同じ実験をしたところ、どの海藻の場合でも、共通の性質をもっている成分の脂質が抗ガン性を示しました。

このことから、海藻粉末の抗ガン性の本体には、食物繊維の酸性多糖のほかに、ある種の脂質も関係していることがわかったのです。
以上のような海藻の抗ガン効果が、はたして人間にとってはどうなのかというのは大きな間題です。しかし、ワカメの芽株の水に溶けない多糖が主成分のサンプル(おそらくアルカリ可溶のアルギン酸が主体)は、ガンを移殖したマウスに対して、現在人間に使用されている抗ガン剤と相助効果があるという報告もありますから、海藻からとれる抗ガン成分には、将来、その利用価値が望めるような気がします。

コンブに含まれる食物繊維

アルギン酸とフコイダン

コンプには、その成分の25%を占めるアルギン酸をはじめとして、フコイダンなどからだに有益な食物繊維がおよそ30~40%豊富に含まれています。

このうちフコイダンの量は多くても数%以下で、残りはアルギン酸です。これは、食品の中で比較的多く食物繊維を含んでいるといわれているバナナで約7%、整腸食品として名高いリンゴで約12%にしか過ぎないのですから、その多さはとび抜けていることがよくわかります。

コンプに含まれるアルギン酸もフコイダンもペクチンなどと同じく酸性多糖で、水によく溶ける性質、水溶性の機能に富んだ食物繊維です。
したがって、コンプの葉の部分や根コンプを水に漬けると、ヌメリが出てきますが、その中には水溶性のアルギン酸やフコイダンが溶けていて、食物繊維としての効用に役立つのです。

また、酸性の多糖ですから、ブドウ糖や果糖などの中性の単糖がいくつも集まってできたデンプン(ブドウ糖の鎖) やイヌリン(果糖のから鎖) などより、さらに複雑に絡み合って、全体としては粘性の高いヌメリとなります。

水溶性とか、アルカリ可溶性かにかかわらず、アルギン酸やフコイダンは血中のコレステロールを減らし、動脈硬化を防いだり、試験動物に移植したいろいろなガンや大腸ガンを防ぐ働きをしたりと、実に効果的な働きをしてくれるのです。

何度も述べましたように、その抗ガン性が、すぐに人間のガンにも有効だという証拠は、今のところまだありませんが、消化管内でいくらかでも吸収されたものが、免疫系を刺激して、間接的に抗ガン性を示す可能性が期待されているのです。

少なくとも、発ガン性の物質の排除に役立つことは、一般的に信じられています。ですから、毎日の食事にコンプを積極的にとり入れ、日ごろからアルギン酸やフコイダンを摂取していれば、多くの成人病の予防のほかに、肥満防止や非常に間接的ではあっても、ガン予防に役立つ希望がもてるのです。

食物繊維と腸内細菌

コンプの食物繊推は、便秘を防ぐとともに、腸の中をきれいに掃除してくれるという働きもありますが、腸内の細菌に関していえばそれだけではありません。

人間の腸には、主に小腸の終りのほう、つまり回腸から先の大腸の中には、いろいろな細菌が住みついており、その種類は100種類以上あり、量も、大便の湿重量1グラムあたり1千億以上にもなり、健康なヒトの大腸の中の細菌の量は、1.5キログラムにもなります。
ですから、大便の約半分は細菌であるということになります。こうした多くの腸内細菌は、腸内のばい菌というわけですので、そのすべてが病気のもとと思われがちですが、決してそういうわけではなく、たとえばビフィズス菌に代表される放線菌などのように、私たち人間のからだになくてはならない作用をする菌、すなわち善玉菌が腸内にはたくさん存荏しています。

いっぽう、そこには、からだに害をおよぼすおそれのある悪玉菌( 病原菌)も、ウエルシュ菌やバクテロイデス菌、大腸菌なども多数見られます。
そして、こうした悪玉菌の繁殖は、成人病や老化の原因となり、ガンや肝臓病、動脈硬化、免疫力の低下といった病気になって私たちのからだをむしばむのです。

ふつう、善玉、悪玉両方の菌のバランスが保たれていれば、仮に腸内に悪玉菌があったとしても、何も問題はありません。ところが、ひとたびそのバランスがくずれると、からだの中でおとなしくしていた悪玉菌が本領を発揮し、人体にとって有害な物質を作り出して、いろいろなへい害を引き起こします。

ですから、健康を維持するためには腸内の善ふさ玉菌を増やして、つねに悪玉菌を抑えるようにしなくてはなりません。しかし、善玉菌の代表であり、私たち人間が生まれながらにしてもっているビフィズス菌は、ヒトが成長するにつれ、かたよった食生活やストレスが続くと、しだいにその数が減ってきます。

そこで、ヨーグルトなど善玉乳酸菌を含む食品をとることもよいといわれていますが、残念ながら食品で補給する細菌は、なかなか腸に住みついてくれません。ですから、腸内に前から住んでいた善玉菌そのものに栄養を与え、増やしてやることがどうしても必要となるのです。

食物繊維自体は、直接人間の栄養にはなりませんが、ビフィズス菌の栄養となり、それを増やす作用をもっていますので、コンプを食べていれば、その中の食物繊維が、からだの中のビフィズス菌を増やすはずであり、ひいてはコンプが成人病や老化からからだを守ってくれることになります。

食物繊維

ここ数年、食物繊維を含んだ健康食品やドリンク剤などの食品が次々に発売されており、中には「機能性食品」または「健康食品」などの言葉を使って宣伝しているものもあります。
これは一種のブームであり、食物繊維に対する関心がとみに高まっていることをあらわしているのではないでしょうか。

一般に、食物繊維は人間のからだの中の消化酵素では分解されない、「植物または動物にある多糖類で、特殊な生理活性をもっている物質」とされています。この食物繊維が五大栄養素(タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラル) に次ぐ「第六の栄養素」として一躍脚光を浴び、注目されているのは消化管に入ったときに、少なくとも小腸の終りのあたりまではあまり分解されないで、腸のぜん動(波うつような動き) を刺激し、便秘を防ぎ、ひいては食べ物の中にある、からだに害を与える物質などを、からだから早目に排除するなどの作用が認められたためです。

したがって、口から入ったものばかりではなく、腸の中で二次的に生成された発ガン性の物質なども、早目に吸着して除去するので、食物繊維は腸ガンの予防になる、などという宣伝までされるようになってきました。
食物繊維は、もともと人体では消化されないのが特徴です。ですから、スポンジのように水分を吸収して便の量を増やして排便を促す作用は知られていたものの、これまでは消化が悪くエネルギー源にはならないうえ、栄養素の排出を促進させてしまうとの理由から、栄養的にはばとんど価値がなく、むしろ邪魔者扱いされてきました。

食物繊維は一種の多糖類であり、しかも消化されない物質です。このような生物にある多糖といえば、植物では細胞壁を構成するセルロースやヘミセルロース、細胞壁の間につまっている粘り気のある多糖、たとえばペクチン。

さらに、細胞から植物体の表面に分泌する植物ガム多糖などがあげられます。梅の木などの茎に赤茶色のガム状の粘った物質がついているのをご覧になったことがあると思いますが、あれが植物ガムの一種です。

このうち、とくに食物繊維として利用されるものは、一般に食物中のコレステロールの一部を包み込んで、便とともに体外に排出する働きの大きいものや、発ガン性(特殊な細菌が突然変異を起こし、性質がかわる程度で判断して、発ガン性の大小を決めることが多い) のある性質をもつ物質、たとえば魚や肉など焼いた際に発生する物質の中によく発見されるニトロサミンのような物質を、包み込んで体外に排出する度合の大きいものなどです。

つまり、その力の強い多糖ほど食物繊維としての機能が高いと判断されます。

こうしたことにもとづいて、植物の中にある、94いま述べましたような多糖を見てみますと、セルロースは、そのままではこの機能が低いのです。粒子を細かくする特殊な操作をして、粒子の直径が1ミクロン(ミクロンは100〇万分の1メートル) にすると高い機能性が出てきます。もちろん、こうした加工セルロースは食物繊維として市販されています。

ペクチン、またはペクチン質は、水溶性食物繊維として優良な多糖です。ヘミセルロース類はセルロースのように水に溶けないものと、半水溶のものとに便宜上分けられますが、水に不溶性のものは、セルロースと同様に機能性は低く、半水溶性のほうが一般的に、たとえばコレステロールを包み込んで排出する力は強いのです。

昔から日本人がよく食べるコンニャクは、こんにゃくという植物の球茎に貯蔵される一種の多糖で、グルコースのほかにマンノースという糖が加わってできているもので、中性の水溶性多糖で、消化管の中では一部はゲル状になっています。

血中コレステロール値の高い場合に、コンニャクを食べるとかなり低下します。このことはヒトの実験でも明らかにされています。

もちろん腸内細菌の酵素では分解されますが、人間の消化液では分解されにくい物質です。したがって、コンニャクは良質の食物繊維ということができます。

ペクチンは、以前にはゼリー菓子などの材料としてゼラチン同様に使われていた、植物にある水溶性食物繊維として認められており、その機能性も高いとされています。陸上の植物は、一方ではセルロースやリグニンのような固い物質を細胞壁の成分として、風などで倒れないように身を守っていますが、一方では細胞の間の充填物質としてペクチンがあり、細胞壁を柔軟にして、やわらかい性質をもたせています。

ところが、栄養の面からみてみますと、セルロースやリグニンは硬くて水に溶けにくく、消化管内で絡み合うような構造になりません。そのため結局、コレステロールや胆汁酸などを包み込む力がばとんどなくなり、機能性に乏しい結果になってしまいます。

しかし、-方のペクチンはそれとは反対に、水によく溶けやすく、消化管内で絡み合って、立体的なジャングル構造になるために、種々の機能性を発揮するのです。動物の肉などから得られる食物繊維としては、カニやエビの表面を被っているキチンを、少々化学的に変化させて、水に溶けるようにしたキトサンという多糖があり、優良食物繊維として市販されているものもあります。

コレステロール値の低下、便秘にキトサン | 100種類のサプリメントの効能と効果

近年になって、これらの食物繊維は、人体の酵素では消化されないものですが、その特徴がかえって意外な効果を示すのです。

つまり、便の量を増やしてすみやかに排便させるということは、それだけ便が腸の中にとどまっている時間が短いことを意味し、そのことが、たとえば大腸ガンの発生率と密接に関係してきたり、また余分なコレステロールを体外に排出するような働きとなってあらわれるのです。

また、食物繊維は低カロリーですので、肥満の予防にも役立つことはいうまでもありません。便は、体内の老廃物の固まりですから、その中にはからだに害になる物質もたくさん含まれています。もちろん、発ガン性物質もそのひとつですが、それが長い間、腸の中にとどまっていれば、発ガン性物質による影響を長く受けることになり、腸ガンが発生する率も高くなるのは、当然のことです。

ですから、便となった食物は一刻も早く体外に排出してしまうことが大事で、それを助ける食物繊維の重要性はいうまでもありません。
さらに、食物繊維の利点はそれだけではないのです。というのは、食物繊維には発ガン性物質そのものや、発ガン性物質の働きを助ける物質を吸着する作用や、水を吸って便を薄める作用もあるからです。

つまり、食物繊維は、腸の中に発生した発ガン性物質のような、からだに有害な物質を水で薄めてその働きを弱め、吸着するばかりか、そはいせつれをすみやかにからだの外へ排泄して、ガンの発生をおさえるというすばらしい働きをしてくれるのです。

現在、日本ではガンによる死亡率があいかわらず高くなっていますが、それをくわしく検討してみますと、これまで多かった胃ガンの発生率は年々減少しているものの、欧米など肉食の人々に多い大腸ガンの発生率や死亡率が、ともに上昇の一途をたどっています。

それは、日本人の食生活がだんだんと欧風化して肉食中心になり、とくに脂肪をたくさん摂取するようになったためで、昭和25年には1日目20グラム程度であった日本人の平均脂肪摂取量が、今では50~60グラムと大幅に増え、それにつれて大腸ガンも目立ってきているのです。

また、脂肪摂取量と反比例するように、日本人の繊維摂取量がいちじるしく低下し、本来とるべき食物繊維も、まったくといっていいほど不足しています。こうしたことから、大腸ガンを防止するためにも、まず脂肪のとり過ぎに気をつけ、さらに食物繊維を多く含む食品を積極的に食べることがどうしても必要なのです。

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血中コレステロールを減らす昆布の成分

アルギン酸がコレステロールを減らす

血圧を下げる働きをする昆布のぬめり成分は、水溶性アルギン酸とフコイダンのような酸性多糖ですが、くわしく見ますと、水溶性タンパク質も少量混入しており、全体でからまり合って網状、さらにはジャングル状の立体構造をしているとされています。

それが血圧などを下げる理由はまだよくわかっていませんが、余分なナトリウムと結合して、その吸収量を減らすことにも起因していると考えられます。

いっぽう、コレステロールは簡単にいうと、ちょうど脂肪のような性質をもった物質と考えればいいでしょう。単独で水に溶けているといぅよりは、粒状の形で混ざっているといえます。
しかし、脂質やタンパク質などと結合すると水に溶けるようになります。血液中のコレステロールにはこうした結合型のものが多いのです。ところで、よくコレステロールはその存荏自体が悪であるかのようにいわれます。しかし、コレステロールとは?にも書かれていますが、人にとって欠かせない栄養素の脂質なのです。

現代人は高いコレステロールばかりに意識がいきがちですが、コレステロール自体は何も悪くないということです。これは細胞の膜の重要な成分のひとつなのです。
ただ、そのあり方が問題で、これが血管の壁に沈着すると、動脈硬化を早める一因になってしまいます。ですから、この過剰なコレステロールがとり除かれれば、血管の柔軟性が保たれて血液の流れがよくなりますから、血圧が下がることにもなります。

つまり、間接的に高血圧の予防もできるわけです。アルギン酸は次の2つの方法で、血液中のコレステロールを減らしてくれます。ひとつは、コレステロールの吸収を妨げる作用です。アルギン酸が腸内に入ると、前述のような立体的な網目の構造となっていますので、食物中の過剰のコレステロールを包み、そのまま体外へ排出してしまいます。

アルギン酸によって体外へ連び出されるコレステロールの量は、アルギン酸の董にもよりますが、ネズミの場合、エサの2~3パーセントほどの量のアルギン酸を混入して与えると、エサに含まれるコレステロールの吸収が15~20パーセント減少するという結果もあります。

ですから、コレステロールの含有量の多い卵黄、チーズ、霜降り牛肉、レバー、エビ、カニなどを食べたとき、いっしょにコンプを食べれば、吸収されるコレステロールは80~85パーセントですむことになります。

さんさらに、もうひとつは、胆汁酸の再吸収を防ぐ作用です。胆汁酸は肝臓から腸の中に分泌され、脂肪の吸収を助けるために、脂肪のほかにタンパク質などもとり込み、カイロミクロンという大きな粒子を作って、その形で腸から再び吸収されるのです。このように、いったん肝臓から腸に出てきた胆汁酸の大部分は、再び吸収されて肝臓にもどります。この胆汁酸の循環を、専門的には腸肝循環といいます。

ところが、腸内のアルギン酸は胆汁酸が再吸収されるのを阻害するので、肝臓は胆汁酸の不足を補うために、余分に胆汁酸を作らなければならなくなります。

実は、この胆汁酸の原料となるものがコレステロールであり、肝臓で胆汁酸がどんどん新しく作られるということは、それだけ多量にコレステロールが消費され、血液中からその量が減っていくということになります。

コレステロールを減らそうと、コレステロールを比較的多く含む、肉や魚をなるべく食べないようにしている人もいるようですが、肉や魚のタンパク質はからだのために欠かせないものです。ですから、肉や魚を食べないという消極的な方法ではなく、コレステロールを溶かしている脂肪の多いところは避ける、という工夫をしたうえで、ワカメやコンプを食べて、そこに含まれるアルギン酸をなるべく多くとるようにするという積極的な方法にしたはうがより賢明なのです。

コレステロール除去にはフコイダンも有効

ヌメリ成分に含まれる物質として、フコイダンも忘れるわけにはいきません。フコイダンもアルギン酸同様、水容性多糖の食物繊維のひとつです。

水にはよく溶けますが、腸内では吸収されないで、からだに有効な働きをしてくれます。このフコイダンの働きは血液をきれいにしながら、コレステロールを減らすことです。コレステロールに対するフコイダンの効果のほどをよく示す実験として、次のよう実験例があります。

ネズミにコンデンスミルクを与え続けると、しばらくして血液中に小さな白い粒(リポタンパク質)が増え、ネズミの血液を白くにごらせます。

この粒にはコレステロールも含まれていて、動脈の壁にくっついて動脈硬化を引き起こしたり、血液をドロドロにしたりする、もととなるわけです。
このリポタンパク質だらけの血液中に、ある量のフコイダンを投与(注射)してみます。するとどうでしょう、たくさんあったリポタンパク質はどんどん減り、血液のにごりがすっかりとれてしまうのです。

フコイダンはまさに、血液中の手品師なのです。この実験はフコイダンをネズミの腹部に注射した場合の結果ですが、食べさせて与えた場合にはひじょうに少量ですが吸収され、長時間かければ同様な働きが見られるものと考えられています。では、フコイダンはどのようにして、血液をきれいにし、リポタンパク質を減らすのでしょう。

そもそもコレステロールは、リポタンパクという物質によって各細胞に運ばれ、そこで細膜覆う膜を作る材料になったヤホルモンや胆汁酸の材料になりますが、細胞に運び込まれる量が多過ぎるとそこにたまり、動脈硬化を起こす原因になるのです。
このリポタンパクには、善玉と悪玉の2種類があり、善玉リポタンパクは血中にたまり過ぎたコレステロールを肝臓に戻すという働きをします。これに対して、悪玉リポタンパクは、血中コレステロールを中性脂肪などといっしょに血管の壁に付着させてしまうのです。フコイダンは、こうしたリポタンパクの分解を間接的に促進する働きをもっています。血液中には悪玉リポタンパクが多いので、実際には善玉と悪玉の両方とも減らしてしまうのですが、結果的には悪玉リポタンパクをより多く減らすことになり、コレステロールが血液の壁に付着することを防いで、動脈硬化を予防してくれるのです。

フコステロールの力も

これまで、動脈硬化を防ぎ、血圧を下げる昆布のヌメリ成分の効果について紹介してきましたが、昆布の有効成分にはこれ以外にもまだあります。
それは、フコステロールという植物性ステロールです。フコステロールは、コレステロールと名前もよく似ていますし、化学構造式も類似しています。
ですから、コレステロールのように、動脈硬化を促進するのではないかと心配する方もあるかと思いますが、この2つは、兄弟のようなものでありながら、その働きだけは裏と表のようにまったく異なっているのです。つまり、フコステロールは、血中のコレスロールを減らす働きをもっているのです。

コレステロールは、もともと細胞を包む膜や胆汁、性ホルモンの原料として欠かせない物質です。そこで、食物から摂取するだけでは足りませんので、肝臓が合成しています。
しかし、だからといって、肝臓でむやみに合成していたのでは、今度はコレステロールの量が多過ぎてしまいます。そのため、コレステロールがある一定の量以上になると、肝臓での合成はストップするようになっていますが、このとき、肝臓でのコレステロール合成を抑制する働きに、フコステロールが大きな役割を果たしているのではないかと考えられています。
肝臓でのコレステロール合成が低下すれば、当然、血液中のコレステロールも減りますから、動脈硬化も防げるというわけです。

このほか、フコステロールには血液を固まりにくくする作用も知られています。血液が固まったものが、いわゆる血栓で、これができると脳梗塞や心筋梗塞などといった、いろいろな弊害を引き起こします。

血液の中にあるプラスミノーゲンという物質は、酵素化学変化によってプラスミンという物質(一種の酵素)になりますが、このプラスミンには、血小板とともに固まったフィプリン( 血栓のもとになる繊維性タンパク質)を溶かす作用があります。ところで、最近の実験によりますと、フコステロールは、このプラスミノーゲンをプラスミンにかえる活性因子( 一種の酵素) に作用して、血液を固まりにくくするという結果が得られているのです。

また、血圧は、血中のナトリウムとカリウムのバランスに支配されています。そのバランスががナトリウムのほうに傾くと血圧が上がり、カリウムのほうに傾くと下がります。フコステロールには、このバランスをカリウムのほうに向け、血圧が上昇するのを調節する働きもあるのです。

たくさんの酵素の働きが関係していて、たとえば、アンジオテンシンⅠという物質を、血圧を上昇させる物質アンジオテンシンという物質に変化させ、バランスをナトリウムのほうに傾ける酵素があります。

フコステロールは、この酵素が増えるのをおさえ、ナトリウムに傾いたバランスをカリウムにもどし、血圧を下げる働きをすることがわかりました。つまり、フコステロールは血栓の予防や血圧を下げるのに役立つことになります。

血液が固まるのを防ぐフコイダン

からだの血液中にはヘパリン(またはヘパラン)と呼ばれる硫酸多糖があります。それは主に肝臓で作られ、血液中に出てくると血球を固まりにくくしてさらさら流れやすくするように調節する働きをもっています。

ヘパリンが多過ぎる場合には血球が固まりにくくなり、血液の粘性は下り、ひいては血圧が下降したりします。反対に少な過ぎるとその逆の現象が起こり、場合によっては血栓ができやすくなります。昆布などに含まれているフコィダンは、構造はまったくヘパリンと違いますが、その作用をもっています。

フコイダンは小腸では消化されない物質ですし、分子も大きいのでそのまま吸収されるかどうかが問題で、もし吸収されないときにはその作用もあらわれないことになります。しかし、最近では、学者の間で少しは吸収されるのではないかと考える人もいます。
フコイダンの中にはヘパリンより抗血液凝固作用が強いものもありますので、少しでも吸収される場合にはそのまま作用があらわれることになるでしょう。

血圧を下げる昆布の成分ラミニン

昆布は長寿食の代表

本人の生活も昔にくらべると、ずいぶん豊かになりました。とりわけ、食生活のかわりようには驚くばかりで、今日食べるお米にも困った戦争直後の話など、今の若い人たちにはとうてい信じられないことでしょう。

しかし、そのいっぽうでかたよった食生活のため、健康を害することも決して少なくありません。食事面でいろいろと気を配っている人が多いのも、そんな飽食時代の困った一面といえるでしょう。

なかでも、塩分のとり過ぎに気をつけている人が目につきます。というのも、体内の塩分が過剰になると、血圧が高くなり、脳卒中に代表されるからだの弊害が引き起こされやすいからです。
血圧を上昇させる危険因子

味噌、しよう油、漬け物など塩分の多い食品を食べる習慣をもっている日本人は、苦から脳卒中の多い国民です。現在でも、脳卒中は死亡原因の上位を占めています。ところが、長寿食の研究家として有名な東北大学の教授の調査によると昆布やワカメなどの海藻もよく食べる地域には、長寿の人が多く、その地域ではほかの地域にくらべると、とりわけ脳卒中が少ないという結果が出ています。

これは、ひじょうに注目すべき結果といえるでしょう。なぜなら、これこそ、昆布には血管を丈夫にして血圧を下げ、脳卒中を防ぐ作用があることの裏づけにほかならないからです。

昔から民間療法として、汚れをとった一片の昆布を一晩、水に漬けておき、翌朝コンプの成分が溶け出してトロッとした水を、血圧など調節するのに効くといって飲んでいました。根昆布水は高血圧を抑制する

実は水に溶け出た成分、すなわち、ヌメリ成分が動脈硬化を防ぎ、血圧を下げる成分の正体なのです。もちろん昔の人々が、このコンプのヌメリ成分が脳卒中を防いでくれるということを科学的に知っていたわけではありません。長年にわたる日本人の経験が「生活の知恵」として受け継がれてきたわけですが、そうした知恵のすばらしさには驚かぎるを得ないところです。
コンブの驚くべき薬理効果はこちら。

昆布の目玉成分「ラミニン」

ヌメリ成分のほかに、昆布にはもうひとつ、血圧を下げる効果をもった成分があることが知られています。それがアミノ酸の一種であるラミニンです。
このラミニンという名称自体が、コンプの科学名、ラミナリアに由来しているものであるということからもわかるとおり、昆布の成分の中でも大事なもののひとつです。
ラミニンの量はそれほど多くはなく、真昆布で100グラム中1.89ミリグラム、三石昆布100グラム中6.34ミリグラムです。ウサギを使った動物実験では、このラミニンを与えると確実に血圧が下がることが確認されています。

ただ、この作用は一過性のもので、比較的短4い時間にまた元の血圧に戻ってしまう性質のものです。その含有量から考えて、コップ1杯分の根コンプ水に含まれるラミニンを摂取したくらいでは、高くなった人間の血圧を下げる量にはなりそうもないようです。
しかし、毎日必ずコンプを食べ続ければ、このラミニンの効果に加えて、ヌメリ成分の効果も作用して、つねに適正な血圧をたもてることになるのではないでしょうか。

いっぽう、昆布にはひじょうに多量のヨウ素(主に無機型、たとえばヨウ化カリウム) が含まれています。きよくほう日本の局方ではヨウ化カリウムを動脈硬化症の薬として使っています。根コンプ水中に溶け出してくるヨウ素も血圧調節に役立っていることが考えられます。こうしたことを思うと、毎日欠かさず昆布を食べると意識があることがきっとわかっていただけるはずです。

ラミニンの分布

ラミニンは、最初昆布から抽出結晶化して、その化学構造を決めたもので、昆布科の褐藻にかぎつて含まれているようです。含有量のもっとも多いのは、三石コンプですが、続いてその3分の1程度が、そのほかの昆布の仲間です。
しかし、ラミニンはアミノ酸の一種ですので、季節によってもコンプに含まれる量が変化するものと思われますから、分析値は絶対のものではありません。また、ワカメには三石コンプの15分の1程度しかありません。しかし、コンプの仲間つまり昆布属( ラミナリア) には一般的に多いのは確かです。

根コンブ水の特徴的なぬめりについて

ヌメリの正体は多糖

昆布の栄養をもっとも簡単かつ有効に活用できるのが「根コンプ水」です。この根コンプ水は自宅でつくることができますが、昆布の葉の下部と茎の上部の間の成分を水でしみ出させた液のことです。

昆布はにもどしても、料理に使っても表面にヌメリが出ますが、この根昆布水のヌメリも、コンプの葉の部分から出るヌメリと同じ成分です。
このヌメリは、おおまかにいうと水に溶けやすい性質をもった2種類の多糖と少量のたんぱく質の混合物です。

多糖とは、ブドウ糖や果糖などの個々の糖が化学的に何百、何千もつながったものの総称です。ほとんどすべての植物の細胞壁の主成分のセルロースや、米やジャガイモのデンプンもこの多糖の一種です。
昆布やワカメなどの海藻のヌメリは、多糖の中でも、全体として酸性の性質をもっていますので、酸性多糖といいます。形や性質が繊維状ですので、食物繊維としての性質ももっています。

これに対して、デンプンやセルロースは中性多糖で、セルロースは繊維ですが、デンプンは繊維状のものではありません。これらの多糖が酸性であるわけは、構造の中に硫酸を結合していたり、カルポキシルのような酸性の原子団をもっているからです。

このことは、多糖がからだのためになる、いろいろな性質をもっているということをあらわしています。私たちのからだの関節につまっている潤滑液も、別の種類の酸性多糖です。酸性多糖にも多くの種類がありますが、根昆布水に含まれているものは、水溶性アルギン酸とフコイダンという硫酸多糖です。

アルギン酸には中性の水には溶け出さなくて、アルカリ性にすると溶け出てくるアルカリ可溶性アルギン酸もあります。これら酸性多糖は、構造が非常に複雑なため、まだ解明されていない点も数多くあります。その性質の中で人体に有効な性質をあげますと、

  • ヒトの消化液では消化されにくい。網の目が縦横にからまったような立体構造をしながら胃や小腸を通るので、種々の物質をとり込んで排泄する。
  • 酸性で種々のミネラルと結合しやすい。消化管内で各種のミネラルと結合しやすいので、食品とともに比較的多く摂取されるナトリウムとは結合しやすく、したがって、多量に存荏するナトリウムは結合されて排出される。

などがあります。
また、こうしたヌメリは、海≠操が海中で生きあわているときにもその表面を被っており、海水中の細菌などの侵入を防ぐ働きをしているとされています。

根昆布はヌメリがたっぷり

健康食品として有名になった根昆布ついてです。根昆布の葉の部分は、成長が早く、細胞の分裂力も旺盛で老化しにくいところです。
成分を比較しても、ヌメリやヨウ素などは葉や茎の部分より量が多く、またある種の酵素なども活性が高いことがわかっています。また、根昆布の部分は市販されているいろいろな昆布製品の中でも成分含有量がだいたい一定していますので、葉のほかの部分より、製品による優劣がないようです。その意味で健康食品として昆布を見た場合には、どちらかといえば、品質上当たりはずれがない製品ともいえるでしょう。そうしたわけですので、上質の昆布ならば、葉の部分でも、根コンプと同等の効果が期待できます。

わかめのヌメリは昆布のヌメリと一緒?

化学的に基本分析をしますと、昆布もワカメも成分の種類ははとんど同じですが、細かい点で多少違ってきます。それでは肝心のヌメリに関してはどうでしょうか。ワカメのヌメリも本質的にはコンプと同様で、水溶性のアルギン酸とフコイダンと少量のタンパク質の混合物と考えられます。もちろん、細かい化学的な性質は違いますが、健康に対する有効性の点では同等です。

しかし、昆布とワカメの市販の製品の多くは製造法や保存方法が違うことが問題です。昆布は、根コンプも含めて単なる素干し品が大部分ですが、ワカメの場合には、大部分の製品が湯通し塩蔵ワカメです。
つまり、とってきた生ワカメの藻体から胞子めかぶ葉(芽株ともいい、葉のつけ根から根までの茎のわきに胞子を作る葉がついている部分) を切りとった葉部を85~100度の熱湯で1分程度湯通ししてから20~40%の塩に漬けます。そして、茎をとり除き、さらに塩といっしょに重しをのせて脱水してから適量の塩をまぶして、市場に出しているのがこの塩蔵製品です。

したがって、水溶性のアルギン酸やフコイダンがかなり流れ出してしまい、残りは、ヌメリの残った部分とアルカリ可溶性のアルギン酸ということになります。

もっとも、昆布もワカメも、ヌメリ中に出てくる水溶性のアルギン酸は全アルギン酸の4分の1から5分の1ですから、食物繊維としてのアルギン酸はワカメの塩蔵品にも十分残っているのです。ただし、ヌメリを集めるには不適当だといえましょう。しかし素干しワカメの場合には、いくぷん量は少ないのですが根コンプと同じようにヌメリをとることができます。

ビタミン効果

昆布にはあまり印象がありませんが、じつはビタミン類にも比較的富んでいます。100グラムの無水のコンプ(乾燥させたもの) には、以下のような量のビタミンが含まれています。

  • ビタミンA(1.0mg/560IU)
  • ビタミンB1(0.4mg)
  • ビタミンB2(0.37mg)
  • ビタミンB12(0.03mg)
  • ビタミンC(25mg)
  • ナイアシン(1.4mg)

ビタミンA は肌を美しくたもつとともに、皮膚や粘膜を強くし、風邪に対する抵抗力をつけます。そのうえ、夜盲症にも効果をもつビタミンとして古くから知られています。現代人は特にこのビタミンAが不足しています。

ビタミンB1は、失われた体力を回復し、脚気症状を改善します。またビタミンB2は肝臓の解毒作用を強め、二日酔いにも効果を発揮します。ナイアシンもビタミンB群のひとつです。いずれも呼吸(エネルギー発現の元) に関連した酵素の一部となっています。
B12は、その分子中にコバルトをもち、神経を強くするビタミンです。動物の臓器にあり、動物ビタミンといわれているくらいですが、植物では主に海藻に含まれているビタミンです。
海藻ではノリが圧倒的に多く含んでいます。おなじみのビタミンCは、ビタミンA 同様、肌を美しく保ち、シミなどの色素沈着を防ぐとされ、最近では積極的に摂ると風邪予防になったりガンの予防にもなると言われています。しかし、緑黄色野菜に比べると昆布のビタミンc含有量は少量です。

脂質

昆布の成分として次にとりあげたいのは脂質です。脂質というのは、ふつうの脂肪分を含めた広い意味での油やエーテルなどに溶ける成分をいいます。昆布の脂質の量は、水分をとった藻体の場合でも2.5パーセント程度で、比較的少量ですが、その中身は私たちのからだによい脂肪酸が多いのです。たとえば、養殖コンプ中の2.5パーセントの脂質には総脂肪酸が2.28ーセントあり、そのうち血小板凝集を防ぎ、血栓の形成防止に役立つ、EPA(イワシやサンマの油の中に多い) が220ミリグラム、不可欠脂肪酸(ビタミンFともいわれる)が339ミリグラム、そのほか、類似の性質の脂肪酸が202ミリグラムなどで、脂肪酸全体の35パーセント近くもあります。こうしてみますと、この昆布の脂質は、栄養的には見逃せない成分といえるでしょう。