昆布の成分 コレステロール を減らす作用があることがわかっています。コレステロールの含有量の多い卵黄、チーズ、霜降り牛肉、レバー、エビ、カニなどを食べたとき、いっしょに昆布を食べれば、吸収されるコレステロールは80~85パーセントですむことになります。
昆布の成分 コレステロールを減らすのはアルギン酸によるもの
血圧を下げる働きをする昆布のぬめり成分は、水溶性アルギン酸とフコイダンのような酸性多糖ですが、くわしく見ますと、水溶性タンパク質も少量混入しており、全体でからまり合って網状、さらにはジャングル状の立体構造をしているとされています。
それが血圧などを下げる理由はまだよくわかっていませんが、余分なナトリウムと結合して、その吸収量を減らすことにも起因していると考えられます。
いっぽう、コレステロールは簡単にいうと、ちょうど脂肪のような性質をもった物質と考えればいいでしょう。単独で水に溶けているといぅよりは、粒状の形で混ざっているといえます。
しかし、脂質やタンパク質などと結合すると水に溶けるようになります。血液中のコレステロールにはこうした結合型のものが多いのです。ところで、よくコレステロールはその存荏自体が悪であるかのようにいわれます。しかし、コレステロールとは?にも書かれていますが、人にとって欠かせない栄養素の脂質なのです。
現代人は高いコレステロールばかりに意識がいきがちですが、コレステロール自体は何も悪くないということです。これは細胞の膜の重要な成分のひとつなのです。
ただ、そのあり方が問題で、これが血管の壁に沈着すると、動脈硬化を早める一因になってしまいます。ですから、この過剰なコレステロールがとり除かれれば、血管の柔軟性が保たれて血液の流れがよくなりますから、血圧が下がることにもなります。
つまり、間接的に高血圧の予防もできるわけです。アルギン酸は次の2つの方法で、血液中のコレステロールを減らしてくれます。ひとつは、コレステロールの吸収を妨げる作用です。アルギン酸が腸内に入ると、前述のような立体的な網目の構造となっていますので、食物中の過剰のコレステロールを包み、そのまま体外へ排出してしまいます。
アルギン酸によって体外へ連び出されるコレステロールの量は、アルギン酸の董にもよりますが、ネズミの場合、エサの2~3パーセントほどの量のアルギン酸を混入して与えると、エサに含まれるコレステロールの吸収が15~20パーセント減少するという結果もあります。
ですから、コレステロールの含有量の多い卵黄、チーズ、霜降り牛肉、レバー、エビ、カニなどを食べたとき、いっしょに昆布を食べれば、吸収されるコレステロールは80~85パーセントですむことになります。
さんさらに、もうひとつは、胆汁酸の再吸収を防ぐ作用です。胆汁酸は肝臓から腸の中に分泌され、脂肪の吸収を助けるために、脂肪のほかにタンパク質などもとり込み、カイロミクロンという大きな粒子を作って、その形で腸から再び吸収されるのです。このように、いったん肝臓から腸に出てきた胆汁酸の大部分は、再び吸収されて肝臓にもどります。この胆汁酸の循環を、専門的には腸肝循環といいます。
ところが、腸内のアルギン酸は胆汁酸が再吸収されるのを阻害するので、肝臓は胆汁酸の不足を補うために、余分に胆汁酸を作らなければならなくなります。
実は、この胆汁酸の原料となるものがコレステロールであり、肝臓で胆汁酸がどんどん新しく作られるということは、それだけ多量にコレステロールが消費され、血液中からその量が減っていくということになります。
コレステロールを減らそうと、コレステロールを比較的多く含む、肉や魚をなるべく食べないようにしている人もいるようですが、肉や魚のタンパク質はからだのために欠かせないものです。ですから、肉や魚を食べないという消極的な方法ではなく、コレステロールを溶かしている脂肪の多いところは避ける、という工夫をしたうえで、ワカメやコンプを食べて、そこに含まれるアルギン酸をなるべく多くとるようにするという積極的な方法にしたはうがより賢明なのです。
コレステロール除去にはフコイダンも有効
ヌメリ成分に含まれる物質として、フコイダンも忘れるわけにはいきません。フコイダンもアルギン酸同様、水容性多糖の食物繊維のひとつです。
水にはよく溶けますが、腸内では吸収されないで、からだに有効な働きをしてくれます。このフコイダンの働きは血液をきれいにしながら、コレステロールを減らすことです。コレステロールに対するフコイダンの効果のほどをよく示す実験として、次のよう実験例があります。
ネズミにコンデンスミルクを与え続けると、しばらくして血液中に小さな白い粒(リポタンパク質)が増え、ネズミの血液を白くにごらせます。
この粒にはコレステロールも含まれていて、動脈の壁にくっついて動脈硬化を引き起こしたり、血液をドロドロにしたりする、もととなるわけです。
このリポタンパク質だらけの血液中に、ある量のフコイダンを投与(注射)してみます。するとどうでしょう、たくさんあったリポタンパク質はどんどん減り、血液のにごりがすっかりとれてしまうのです。
フコイダンはまさに、血液中の手品師なのです。この実験はフコイダンをネズミの腹部に注射した場合の結果ですが、食べさせて与えた場合にはひじょうに少量ですが吸収され、長時間かければ同様な働きが見られるものと考えられています。では、フコイダンはどのようにして、血液をきれいにし、リポタンパク質を減らすのでしょう。
そもそもコレステロールは、リポタンパクという物質によって各細胞に運ばれ、そこで細膜覆う膜を作る材料になったヤホルモンや胆汁酸の材料になりますが、細胞に運び込まれる量が多過ぎるとそこにたまり、動脈硬化を起こす原因になるのです。
このリポタンパクには、善玉と悪玉の2種類があり、善玉リポタンパクは血中にたまり過ぎたコレステロールを肝臓に戻すという働きをします。これに対して、悪玉リポタンパクは、血中コレステロールを中性脂肪などといっしょに血管の壁に付着させてしまうのです。フコイダンは、こうしたリポタンパクの分解を間接的に促進する働きをもっています。血液中には悪玉リポタンパクが多いので、実際には善玉と悪玉の両方とも減らしてしまうのですが、結果的には悪玉リポタンパクをより多く減らすことになり、コレステロールが血液の壁に付着することを防いで、動脈硬化を予防してくれるのです。
フコステロールの力も
これまで、動脈硬化を防ぎ、血圧を下げる昆布のヌメリ成分の効果について紹介してきましたが、昆布の有効成分にはこれ以外にもまだあります。
それは、フコステロールという植物性ステロールです。フコステロールは、コレステロールと名前もよく似ていますし、化学構造式も類似しています。
ですから、コレステロールのように、動脈硬化を促進するのではないかと心配する方もあるかと思いますが、この2つは、兄弟のようなものでありながら、その働きだけは裏と表のようにまったく異なっているのです。つまり、フコステロールは、血中のコレスロールを減らす働きをもっているのです。
コレステロールは、もともと細胞を包む膜や胆汁、性ホルモンの原料として欠かせない物質です。そこで、食物から摂取するだけでは足りませんので、肝臓が合成しています。
しかし、だからといって、肝臓でむやみに合成していたのでは、今度はコレステロールの量が多過ぎてしまいます。そのため、コレステロールがある一定の量以上になると、肝臓での合成はストップするようになっていますが、このとき、肝臓でのコレステロール合成を抑制する働きに、フコステロールが大きな役割を果たしているのではないかと考えられています。
肝臓でのコレステロール合成が低下すれば、当然、血液中のコレステロールも減りますから、動脈硬化も防げるというわけです。
このほか、フコステロールには血液を固まりにくくする作用も知られています。血液が固まったものが、いわゆる血栓で、これができると脳梗塞や心筋梗塞などといった、いろいろな弊害を引き起こします。
血液の中にあるプラスミノーゲンという物質は、酵素化学変化によってプラスミンという物質(一種の酵素)になりますが、このプラスミンには、血小板とともに固まったフィプリン( 血栓のもとになる繊維性タンパク質)を溶かす作用があります。ところで、最近の実験によりますと、フコステロールは、このプラスミノーゲンをプラスミンにかえる活性因子( 一種の酵素) に作用して、血液を固まりにくくするという結果が得られているのです。
また、血圧は、血中のナトリウムとカリウムのバランスに支配されています。そのバランスががナトリウムのほうに傾くと血圧が上がり、カリウムのほうに傾くと下がります。フコステロールには、このバランスをカリウムのほうに向け、血圧が上昇するのを調節する働きもあるのです。
たくさんの酵素の働きが関係していて、たとえば、アンジオテンシンⅠという物質を、血圧を上昇させる物質アンジオテンシンという物質に変化させ、バランスをナトリウムのほうに傾ける酵素があります。
フコステロールは、この酵素が増えるのをおさえ、ナトリウムに傾いたバランスをカリウムにもどし、血圧を下げる働きをすることがわかりました。つまり、フコステロールは血栓の予防や血圧を下げるのに役立つことになります。
血液が固まるのを防ぐフコイダン
からだの血液中にはヘパリン(またはヘパラン)と呼ばれる硫酸多糖があります。それは主に肝臓で作られ、血液中に出てくると血球を固まりにくくしてさらさら流れやすくするように調節する働きをもっています。
ヘパリンが多過ぎる場合には血球が固まりにくくなり、血液の粘性は下り、ひいては血圧が下降したりします。反対に少な過ぎるとその逆の現象が起こり、場合によっては血栓ができやすくなります。昆布などに含まれているフコィダンは、構造はまったくヘパリンと違いますが、その作用をもっています。
フコイダンは小腸では消化されない物質ですし、分子も大きいのでそのまま吸収されるかどうかが問題で、もし吸収されないときにはその作用もあらわれないことになります。しかし、最近では、学者の間で少しは吸収されるのではないかと考える人もいます。
フコイダンの中にはヘパリンより抗血液凝固作用が強いものもありますので、少しでも吸収される場合にはそのまま作用があらわれることになるでしょう。