ノリは、お寿司やおむすびなどには欠かせないそして、日本人の食生活にも同様に欠かせない食卓の名わき役です。また、お中元やお歳暮の時期に贈答品として利用されることが多いのも、日本人のノリ好きをよくあらわしています。
有用海操の養殖は、最近ではたいへんさかんになり、寒天、カラギーナンなどの原藻をはじめとして、食用のコンプやワカメの養殖も増えてきましたが、なんといってもノリの養殖は歴史が古く、江戸時代に始まっており、以降、日本はノリの養殖では世界一となっています。
現荏では、毎年100億枚前後のノリが製造され、重量でいうと約3万トンになります。そのうち外国に輸出される量は、非常に少なく3~4%に過ぎません。残りのは国内で消費されているのです。
ノリは一般に12月から翌年2月にかけて収穫されます。そして、それをすぐに水洗いして汚れをとり除いた後、ペースト状にし、機械で四角にすいてから40度の温風で乾燥させて作ります。これがふつうの「干しノリ」で、さらに、赤外線で焦がさないように短時間焼いたものを「焼きノリ」、砂糖や醤油などの調味料で昧をつけて乾かしたものを「昧つけノリ」と呼んでいます。
日本人にノリが好まれているのは、何といっても、こうした製品の昧のよさによるところが大きいでしょう。しかし、最近はそれだけではありません。ノリはビタミンA 、ビタミンB12やほかのB 群および、Cなどのビタミン類やリン、マグネシウム、カリウム、カルシウム、鉄、亜鉛、銅、コバルト、セレンといったミネラル類、さらにはEPA、タンパク質、タウリンをはじめとする遊離アミノ酸、またポルフィランという硫酸多糖の食物繊維や食物繊維になりそうな特殊なヘミセルロースなど、人間のからだに必要な栄養素を多く含んでいますので、健康食品として注目に値します。
これらの成分のうちでも、コンプより多いものはビタミンB群とタウリン、EPAなどでしょう。
成人病に欠かせない
ノリに含まれている有効成分のうち、コンプやワカメにほとんどないものはタウリンです。これは約1~1.2ーセントもあります。タウリンは、肝臓の働きを助け、とくに血中のコレステロール値を調節し、また脂質の吸収を円滑にする働きがあります。
貝類の中で、とくにカキやシジミに多いことはよく知られています。さらに、ほかの有効成分はEPAです。EPAは前にも述べましたように、血液を固まりにくくして、動脈硬化や心臓病、脳卒中などの予防効果もあります。
1枚のノリ(3グラム) には30~40ミリグラムものEPAが入っています。
EPA は不飽和脂肪酸の一種で、体内に入るとプロスタグランディンという物質になりますが、このうちの多くのものは、とくに血液中の血小板が集まるのを防ぐ働きをもつプロスタグランニンにかわります。血小板は血液が固まるのを助けるという作用をしますので、もし動脈硬化を起こしているところへ、この血小板が集まってしまうと、固まりがより大きくなり、動脈が完全にふさがれてしまうことにもなりかねません。
ですから、EPAからできるプロスタブランディンの多くは血液が固まるのを未然に抑えて、ひいては心臓病や脳卒中を防いでくれるというわけなのです。また、EPAそのものには、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やす働きもあります。
ノリはビタミン・ミネラルの宝庫
ノリの栄養素の特徴として、ビタミンの含有量が多く、しかもミネラルがバランスよく含まれていることも見逃せません。たとえば、ビタミンについて見てみますと、βカロテンはウナギのかばやきのビタミンA の3倍、ホウレンソウとほぼ同量、B12 はノリ3枚食べれば、1日の必要量(4マイクログラム) にほぼ足りる量( 約3マイクログラム) が含まれています。
さらにビタミンC は海藻としてはずば抜けて多く、レモンが10グラム中90ミリグラム、トマトが20ミリグラムなのに対して、乾燥ノリは100グラム中、100ミリグラム(生ノリにすると約10ミリグラム)も含んでいます。
また、ノリのミネラル類はコンプなどに比較すると少ないのですが、100グラム中、カリウムが2350ミリグラム、鉄が13.4ミリグラム、カルシウムが440ミリグラム、リンが650ミリグラムと実に豊富に含まれています。
しかも、反面、問題を起こしがちな、塩分のとり過ぎに関係するナトリウムは、その量が著しく少なく120ミリグラムしかありませんので、バランスのよい含有量となっています。
ちなみに、この量はコンプに含まれているナトリウムの約28分の1、ワカメの実に50分の1しかないのです。そのうえノリは調理の必要がなく、そのままで食べられるという手軽な食品です。したがって、1日に2~3枚食べれば食物繊維の補給や栄養的にも十分な効果が得られます。
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